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パリで空前のブーム!? アフリカ現代美術に魅入られた京大院生が、アフリカのイメージを覆す!【アーティストインタビューつき】

2017/11/11 00:14 公開
profileなかむら

偏見があってなかなか伝わらない「アフリカ現代美術の魅力」。
今ブームがきているパリで、出会った作品と人々を紹介しながら、アフリカのイメージを覆すアートの魅力を紹介します。

同時代のアフリカ美術、とは????

「アフリカ地域研究」という所属を口にすると、
「あ~人助けに行くんですか?」みたいな反応をいただく時がある。

私の専門は、同時代のアフリカ美術である。
これを言うと次に帰って来るのは「なにそれ?なんでそんな勉強してんの??それ面白いの?」みたいな反応だ。

答えパターン1
キンシャサ出身の独学のアーティストがヨーロッパで売れたことの地域的表象をとらえることで、コンゴでの「芸術」という概念の内容の変化を追うことができ、同時に、芸術という概念を西洋から輸入した国すべてにおける芸術の定義の不思議な広がりを考える際に役立つ視点を得られるのです。

もっと分かりやすく??

答えパターン2
とりあえず見て!!かっこいいねん!!!
日本で得られる、限られた情報から作られる、アフリカのイメージ、がらっと変わっちゃうねん!!!
パリでもめっちゃ流行ってるねん!!!


(最近のイチオシはキンシャサ出身のEddy Kamuanga)
この記事に登場する、私が出会ったアフリカ出身者、アフリカ系フランス人は、全員私より金持ちで、私より国際的に活動してたり、高学歴だったりもする。
アフリカと、ヨーロッパやアメリカを自由に行き来しながら芸術活動や、文化に関するビジネスをしている人たちだ。

ちゃらちゃらしてキラキラしたアフリカ研究!も、ありでしょ??

現代のアフリカ美術との出会い


今年、高松宮記念を受賞したガーナ出身のアーティスト、エル・アナツィが最初に触れたアフリカ美術だった。2010年に大阪のみんばく(国立民族学博物館)で彼個人の作品展としての美術展があったのだ。

彫刻家として出発した彼は、ビンの蓋をつなぎ合わせた、巨大な布のような造形で有名である。彼の作品はヴァチカンにも所蔵されるなど、国際的に高い評価を受けている。

専門であるコンゴ・キンシャサ出身の画家たちに興味を持ったきっかけは、2015年パリのカルティエ財団美術館で開かれたBeauté Congo
ottk128

これからしばらく私のテーマとなる図録がパリから届きました!ありがとうジュンク堂! Finally I got the exhibition catalogue of #beautécongo! They say that this is a catalogue that explores the extraordinary cultural vitality of the Democratic Republic of the Congo. Je me suis procurée le cata...

www.instagram.com

2016年の春にジュンク堂さんに頼んで取り寄せたときのインスタ。これをきっかけに色んな人に出会った。思えば遠くに来たものだ感がある。
この展示は、1989年に欧米でのアフリカ現代美術ブームの先駆的展示会をキュレートした
アンドレ・マニャン氏のギャラリーによるもので、
これまで彼が売り出すことに成功した芸術家たちの作品が一堂に会し、
また彼ら以前と以後のコンゴのいろんな表現(マンガや音楽、もちろん新世代のアーティストも)を展示した。
異例の入場者数を誇り、11月中旬終了予定の会期を1月まで、大きく延長した、記念碑的イベントとなった。

しかしこのマニャン氏の売り出し方や売り出されたアーティストについては賛否両論ある。
彼が選ぶアーティストたちのほとんどが独学で、例えばもともと路上で絵を売っていた人々であるというところは、西洋の批評家や研究者はもちろん、アフリカ出身の美術教育を受けた芸術家たちからも批判を受けた。

『路上の看板描きのような、素朴な明るい!造形のみを、【アフリカっぽい!】と称賛することには、どこかでアフリカへの偏見が隠れている。』とか
『そうした作品を作る作家も、ヨーロッパの求めるアフリカっぽさを演じて、媚びてるんじゃないのか。あれはそういうパフォーマンスで芸術ではないんじゃないか』と。

私の研究は、この「キンシャサの路上の絵描きが突然パリで現代アートとしてもてはやされ、アフリカ現代美術の代表のようにあつかれた現象」を、実際地元の人はどう見てたんだろう?という視点を美術史研究に加えよう、そして作品を分析しようというものである。
地元での絵の活動実態は実際どのようだったのか、売れた後の彼らへの認識が世代ごとで違うんじゃないか、一般人と芸大にかかわる人でも違うだろう…などから調べている。

展示の仕方、解説の仕方にもさまざまな立場がある。

パリのアフリカアートブーム真っただ中に飛び込む

さて、今年春からパリでは、ラ・ヴィレットやルイヴィトン財団美術館、アート・パリ・アート・フェアなど6つの大きな組織がアフリカをテーマに大規模展示を企画し「アフリカの春」なんて呼ばれたそう。

10月からカルティエ財団美術館でマリの写真家の展覧会が、11月にはAKAAという国際アートフェア(昨年は15000人もの来場者によってにぎわった)が開かれ、世界中からたくさんのギャラリーがアフリカに関するアートを持ち寄る。

そんなパリに一か月滞在した。アートブームの真っただ中。

エッフェル塔のすぐ近くにある民族学博物館、ケ・ブランリではこんな展覧会が。

アフリカの中の多様性や、奴隷貿易以前からアフリカが世界各地と交流して文化を形作ってきたことがわかる展示

ルイ・ヴィトン財団が経営する現代美術館での展覧会は、私のテーマであるキンシャサ出身のアーティストの造形もたくさん。

フランク・ゲーリーによるアヴァンギャルドな建築の中に、かっこよく展示されている。

Moké

Chéri Sambaのこのタイトル(J’aime la couleur)のシリーズは8月に韓国でも展示された。

Romuald Hazoumé アフリカの伝統的な仮面芸術をリサイクル材でパロディした作品たち

Bodys Isek Kingelez 建築模型のような造形を用いて、未来のキンシャサを描いたり夢の都市を出現させるKingelezは来年ニューヨークのMoMAで個人展が予定されている。

Rigobert Nimi  宇宙船や空飛ぶ都市を作る。この展示でもっともフォトジェニックだったのは彼の作品かも。

そのほか、新旧のサブサハラの芸術家たちが一堂に会する。

J.D. Okhai Ojeikere アフリカの「髪型」に注目した写真作品。日本でいうと日本髪、のような結い方が伝統的に受け継がれてきた。日本人にはいまいちピンとこないが、縮毛に対する差別があった(今も残っているともいわれるが)ため、アフロヘアを持つ人が、無理矢理ストレートにしたり、ウィッグをつけたりしていたという歴史があり、こうした写真にはただ美しい・懐かしい以上の意味もあったりする。

Barthélémy Toguoの水彩画

Omar Victor Diop セネガル出身であり、アンドレ・マニャンギャラリーのイチオシ若手写真家によるディアスポラシリーズ。

ラ・ヴィレットでは、中央会場での展示は終了したものの、屋外広場で、写真の展示が。

他にも、小さいギャラリーやデザインイベントでアフリカをフィーチャーしたものがたっくさん。

そんなアフリカブームに沸くパリで、押し寄せる現象をただ眺めているだけではつまらない。


パリの中のアフリカ、のプロに出会う

そこで、私の案内人となってくれたのが、リトル・アフリカのジャクリーンさん。カメルーン系のフランス人女性だ。

彼女は、ギャラリーラファイエットというパリの有名デパートに勤務した後、パリの中に確かに根付いているのにあまり知られていない、アフリカ系の文化やアートを広めようと、ガイドブックを書き、ガイドツアーを始めた。


出典:boutique.littleafrica.fr

リトルアフリカのWEBサイトからも購入できます

「ルーブルとかエッフェル塔もパリ。でも、パリはそれだけじゃない。」
パリをはじめ、ヨーロッパの都市には、歴史で習ったようにアフリカに西欧が進出して以降、それぞれアフリカ系の人々の作ってきた文化がある。
困難な歴史について学ぶ機会はあっても、アフリカから連れてこられた後、
人々がヨーロッパ・アメリカで積み上げてきた記憶・文化は、どんなものなのかあんまり知られていない。

パリにあるアフリカンタウン、シャトールージュにて

それらを知って楽しんでもらおう!記憶を結びつけよう!
ということで、パリの中のアフリカの観光という形でリトル・アフリカはスタートした。

衣装が体験できたり

ごはんを食べたり

柄の意味を教えてもらいながら布を買ったり

そのリトル・アフリカは今や、ダカール、ニューヨーク、ロンドン、リスボンにも活動の幅を広げ、業務内容も、美術展の企画などへと拡大している。

「アフリカとアジアのつながりといえば、経済の投資とかそんな話ばっかりになる。
もっと文化的な交流ができたらきっと楽しいと思う!」

多くの食やエネルギーの原料はアフリカから来ているし、アフリカと日本でも、実はモノはたくさん行き来している。その向こうにある人の姿がもっと見えると、もっと楽しい。


ボーテコンゴをきっかけに研究している。あの展覧会やキュレーターが作り上げるイメージには賛否両論ありますよね、という話をすると…

「もちろんあれも素晴らしい。でも、ああいう明るくて楽しいアフリカ人♪だけじゃないアフリカの姿は、芸術を通してたくさん表現されてるわ!」


彼女が紹介してくれた、今パリで「アツい」アーティストに話を聞いてみた。
彼らは、この「ブーム」に何を思うのだろう?

アーティストインタビュー1人目:Serge Kponton

映像作品:ALIEN

トーゴ系フランス人のSerge さんは、もともと美術学校ではなく、理系の専攻で大学を卒業した。

「そういう意味では、僕は独学のアーティストだ、と言えるかな」

とはいえコンピューターグラフィックスの技術を学び、仕事でデザインや制作にかかわるうち、顧客のためではなく、自分を表現するために制作してみたいと思うようになったそうだ。

初めは、写真をトレースするなどして肖像画を描くところからキャリアをはじめ自分の表現を追求していったそう。初期から、女性の人生に心を動かされることが多かったという。

出典:www.sergekponton.com

Miss World 2063, Japan

より抽象度を上げた様々な表現手法を模索する中で、目を閉じたときに”見える”映像からヒントを得たという、この絵の表現にたどりつく。

ニューヨークで、一日6,7、時間を美術館に居る日々を過ごしていたときに思いついたとのこと。
この一見抽象画のように見える絵には、人物やモノのシルエットがひそかに描き込まれています。隠れた「サイン」を読み解きつつ、総体として模様・絵画としても鑑賞できる。
この「表意文字」(Ideography)のような表現は現在に至るまで彼の作品の核となってる。

そして、彼の芸術家生活のひとつの代表作が、肖像画と、表意文字技法を組み合わせた、
Warrior Series

彼が実際に出会った女性を、架空の「部族」の戦士として描く作品群だ。
表意文字技法で、彼女の人生に関わる象徴的なことがらを、背景やボディペイントとして描いていく。

たとえばこの絵ならヒョウの顔や、口を開けた子供を意味するサインが描かれています。 他にもたくさん。見つかりますか…??

最初に主人公になったのは、ニューヨーク在住の女性で、二人の子供を育てたことなどが暗号のように描き込まれている。

このボディペイントだけを取り出し、実際に人物に施し、映像作品を作った第一弾が、
Unmask Series
これはブラジルで撮影を行った際、その主人公の女性から「絵で描かれるボディペイントを、実際、自分の体にペイントしたらどうなるのか見たい!」との注文があったことからはじまったそう。

さらに、スーパーヒーローの変身シーンに注目し、主人公となる女性のインタビューシーンを挟んだ「Shero」として描く映像作品が、現在精力的に取り組む作品である。
独自にSheroes TVというチャンネルを開設して作品を発表している。


「いろいろやってるから自分についてお話を組み立てるのが難しいね」

現在、それぞれの人や場所に合った象徴を、模様として描く技法は、広く人気を集め、
ボディペイントをお客さんにしてあげる形のイベントや、彫刻として木に模様を彫る仕事、壁に模様を描く仕事なども来るそう。
ギャラリーラファイエット(パリの有名百貨店)のイベントでは、ボディペイントをしてもらうために、二時間も並んだ人がいたとか。

出典:www.sergekponton.com

ギャラリー・ラファイエットでのイベントポスター

出典:www.sergekponton.com

こんな感じで描いてもらえる

出典:www.sergekponton.com

イベントは大盛況!

彼の、マルチメディアに表現を展開し、「〇〇家です」と言い切れない状況は、まさに、もはや分類が難しい「現代アート」のアーティストらしい!
そして、情報技術の発達に伴い、美術学校を出たか、独学か、という括りが作品の性質に、かつてのような大きい意味を持たなくなっているのも、今の美術・アートによく見られる現象だ。

「僕は何でも興味のあるものを表現に取り入れてきたし、カテゴライズされたくないと思っています。
自分では自分のことをアフリカンアーティストだとは思わない。僕はただアーティストだ。」
彼の作品には、部族的なイメージを借りたものがあり、そういう意味で「アフリカ系」であることは売りの一つなのかな、と思ったのだが、彼自身「African contemporary Art 」という括りには馴染まないと感じることが多いという。

「アフリカのデザインやアートのブームが来ているのは感じていて、我々が何をやっているのか知りたい、そういう動きはあるんだけど、まだパリの人々は本当のところはわかってないという感じがしますね」
「ビヨンセがやってるから最近ボディペイントが流行ってるけど、アフリカだけじゃなくて、アジアでもアメリカでも、世界中にボディペイントの文化はあるからね」
「二時間も並ぶのはちょっとどうかしてると思った笑 おもしろいですよね笑」

とボディペイントイベントを振り返る話し方から、このブームを冷静に見ている心境が伝わってきた。

最近、実際、彼がこの象徴を模様に取り込むスタイルを思いついたのもニューヨークで、
それ以降のさまざまな作品も、アフリカ・ヨーロッパに限らず世界の様々な地域の人の人生にフォーカスしながら作られている。

今後は写真作品の展示に力を入れる予定で、
12月にパリの13区で行われる写真展と、マリのバマコで開催されるアートフェスへの参加が楽しみだそう。

一緒に撮ってもらった!

アフリカ現代アートをきっかけに、まさに同時代に、世界を股にかけて生きているアフリカ系アーティストの姿が見えてくる。

次号ではさらに数人の、そして日本にもつながりを持つアーティストを紹介する。

美術作品の鑑賞はもちろんだが、彼らとの出会いは、
「こんな人生のパターンがあるのか」という新しい発見に満ちている。