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京大構内の落ち葉のゆくえは? 謎の鍵を握る、京大で半世紀以上働く職員さんに聞いてみた

2017/10/12 16:10 公開
profileRyo TAKADA

ツツジ・オオモミジ・オガタマノキ・クスノキ。京都大学吉田キャンパス構内には種々の落葉樹が植えられている。
その葉は四季にしたがって色づき落ちるが、その後はどうなるのだろうか。落葉のゆくえを追っていくと、ひとりの職員さんに会った。

あの楠の大量の落ち葉を、引き受ける人がいた


京都大学には種々の落葉樹が植えられているが、なかでも楠の存在感は突出している.サークルの勧誘が一段落つき始めた新緑のキャンパスに、楠はいっけん季節外れな紅の葉を落とす。楠の葉は密度が濃く、落葉の量も半端ではない。


この楠の葉は吉田キャンパス構内中に散乱するが、しばらくすると用務員さんに回収されて、ビニール袋に詰められる。ほとんどの袋は一袋450 円くらいで回収されて焼却施設に送られるらしいが、全体の3 % くらいの落ち葉は、一人の京大職員、真島さんのもとに送られる.

京大で”燃やし続けた”50 余年


真島さんは、半世紀以上京都大学の正規職員として過ごしてきた。

18 歳で高校を卒業したのち、野依先生のいた研究室で技術職員として8 年間働いた。NMRやmass spectrometry といった基礎データをとる仕事を担当していたが、その仕事は楽しいものではなかったという.あくまでも真島さんの仕事は指示されたデータを取る事で、自ら考えて工夫する余地が少なかった。


有機廃液を焼却処理する施設が新しくできるから、「そこで働いてみないか?」と打診されたとき、すぐに志願したという。新しくできた仕事なら、主体性を発揮できると思ったからだ。

そこから43 年間,有機化学系廃液を環境科学センターの中庭にある焼却施設で燃やし続けた。


8 年前に定年退職して、派遣社員になってからも真島さんは京都大学で働き続けている。特にここ6 年ほどは、京大構内でゴーヤを使って壁面緑化してみたり、落葉を集めたりしている。集めた落ち葉は腐葉土にして学内外の欲しい人に分けている。

図.堆肥化に取り組んでいる京都大学職員の真島さん。堆肥化の取り組みについて丁寧に説明して頂いた。

片隅の腐葉土づくり


楠の落葉は環境科学センターの片隅にいったん集めらる。そこで真島さんが手塩にかけて育てたミミズを使って堆肥化され、腐葉土になる。


堆肥化とは、好気性微生物やミミズを使って生ゴミや落葉などを化学的・機械的に分解して農作物の肥料にしやすくする操作の事を言う。

生ゴミをそのまま畑に混ぜてしまうと、腐って臭ったり、土壌中で発酵して酸素が少なくなったりして植物の成長を妨げてしまう事があるから、あらかじめ分解して畑にまくという事らしい。土壌に窒素・リン酸・カリウムなどが供給されて農作物の成長が促進される。生ゴミや落葉といった廃棄物を利用するため、環境にもやさしい。


真島さんは、3 年前の2 月から落葉のミミズ堆肥化に取り組んできた。集められた落葉はゴミや石ころなどを除去したのちに、バッチと呼ばれる0.9 m^3 の区画にためられて、水分量や密度を細かくチェックされながら堆肥化される。

半年ほどたち、十分に堆肥化が進んだ腐葉土は、農業に関心のある学生など、学内外の希望者に無償で提供されている。その際にも、発酵して分離した楠の枝などを丁寧に取り除いて使いやすくしているそうだ。

腐葉土のこれから

図.堆肥化された腐葉土.ビニール袋に詰められて,学内外の希望者に配られる.


構内の落葉の堆肥化は、ゴミの削減にもなるし、農業に関心のある学生が畑を始めやすくなるので教育的にも意義のあることだ。

だから、真島さんとしては作る腐葉土の量を増やしたり、北部生協の生ゴミを堆肥化したりしたいらしいが、「あまりやりたがる人もいないだろうから難しいんじゃないか」と言っていた。

堆肥化自体にもそんなにお金をかけられないし、この手の継続性の必要な取り組みは、大学で続けるのは難しいという。学生も流動的だし、研究費がついたとしてもそのプロジェクトが終われば、予算も止まる。事実、他の大学で似たような取り組みは行われているが、継続できている大学は多くないという。


これからの落ち葉のゆくえはまだ分からない。

編集後記


筆者が真島さんに出会ったきっかけは、熊野寮で畑を始めた際、培養土をいちいち買っていると高くつくからなんとかできないかと思って、腐葉土を無償で提供してくれる人がいないか―と探し始めたことだった。

メールでアポイントをとってから腐葉土を車で取りに行き、腐葉土を150 kg 程度頂いて畑に撒いたのだが、譲ってくださった真島さんが印象的だったので、今回の文をサンロクマルに寄稿しようと思い立った。

真島さんは、次から次へと話が出て来る。しかも、かなり具体的に定量的に語ってくれる。ともすれば些細とも見える事実や物語のなかに、深さを感じさせる話ぶりは、研究者のそれを彷彿とさせた。


筆者が執筆慣れしていないところもあり、文中に出せなかった物語や考え、教官や京都大学の取り組みなど紹介できない部分が多くあった事が悔しいが、ひとまず文章にすることは価値あるだろうと思い、こうして文にした。

最後になったが、腐葉土・ゴーヤの苗・ミミズが欲しい人は、真島さんに連絡すると良い。快く上質な腐葉土などを分けてくれるだろう。連絡先は以下の通り。

majima@eprc.kyoto-u.ac.jp