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キューバの医療は日本よりも進んでいる!? 医療は人の”生き方”に貢献できるのか

2017/07/13 19:07 公開
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日本では、あまり知られていない「統合医療」。これは、日本の医療を次のステップへと進めてくれる大切な概念かもしれません。「自らの手で自分の健康を維持する」という事を、一度考えてみませんか?

1.あなたのカラダ、ちゃんと面倒は見てますか?

カラダの調子が悪い時、あなたはどうしてますか?
病院に行きますか? 市販薬を飲みますか? それとも、日にちグスリと割り切って、治るまで我慢しますか?

人によっては、はり灸や漢方などの伝統医学を利用したり、ヨーガやカイロプラクティックなどの外国から入ってきた方法をとる人もいるかもしれませんね。

次の3つの表をご覧ください。

表1 人口千人当たり臨床病床数など http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000076442.pdfより抜粋改変

表2 病床百床当たり臨床医師数など http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000076442.pdfより抜粋改変

表3 各国の平均寿命(男女) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000076442.pdfより抜粋改変



3つの表からは、次のことが読み取れます。

 ○日本は、病院や診療所の数が多い
 ○日本では、長く入院し、長く外来受診する
 ○日本は、他の国よりずば抜けて寿命が「長いわけではない」

日本は、国民皆保険などの社会保障制度もしっかりしています。ですから、金銭などの事例を除けば、特段、医療について困ったと感じることはないと思います。

でも、ここでひとつ考えてみてください。もしも、明日から医療保険が使えなくなったら、あるいは震災等で病院や診療所が稼働しなくなったら、みなさんはどうやって自分のカラダの面倒をみますか?

2.一歩先をいく新たな医療の「概念」

みなさんは、統合医療というコトバをご存知ですか? 

統合医療とは、「既存の近代西洋医学だけでは解決しない部分を相補・代替医療によってカバーすることで、患者個人に合わせた質の高い医療を提供しよう」という概念に基づく医療(近代西洋医学と相補・代替医療の統合)です。

相補・代替医療とは、漢方や鍼、ヨーガやカイロプラクティックなど、近代西洋医学の理論に属さないものの、人々に恩恵をもたらすと考えられる民間医療、伝統・伝承医療等を指します

例えば、開腹手術後の傷口の回復は人体の治癒力に委ねることになります。現在では割とポピュラーになりましたが、術後の回復に十全大補湯という漢方薬が使われます。十全大補湯の利用によって術痕の回復が早まることは、良く知られています。

他にも、PTSDに対する鍼治療が、認知行動療法等のアプローチに匹敵するほどの効果を持っている事などは、海外においてはよく知られています。

十全大補湯や鍼治療の事例をみてみると、日本でも相補・代替医療が活躍できる場面があるように思えます。

3.統合医療という概念は何故生まれたか

日本における統合医療は、近代西洋医学を基盤としてきた医師や看護師など(以下、医師らと称します)によって1990年代ごろから提唱されはじめました。統合医療を提唱する医師らは、病院や診療所において医療を提供された患者が必ずしも幸福になっていなかったことに疑問を持ち、そういった患者さんの幸福度の向上に注目しました。

今でこそ、「患者がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか」ということを尺度としてとらえる概念(生活の質 Quality of Life: QOL)が医療現場においても重視されていますが、統合医療を提唱する医師らが疑問を感じていた時代、1990年頃は、医療者や医療従事者がQOLに注目しているとは言えませんでした。

統合医療を提唱する医師らは、QOLへの注目のほかに、自らが診察した外来患者や入院患者が話してくれる鍼や灸、健康食品などに関心を持つようになっていきます。この傾向は、科学技術の進展と健康食品に関する日本の制度整備がすすんだことで、企業からの研究費が潤沢となったこと、また、鍼や灸などの効果について、世界保健機関が発信を始めたことなどが複雑に関与した結果であったと考えられます。

統合医療を提唱する医師らは、相補・代替医療に目をつけました。まさに、外来で患者で話していたそれを表現するためのうってつけのワードだったからです。統合医療の概念が提唱されて以降、CAMは、統合医療を提唱する医師らによって、わずかずつながら日本社会に紹介されていきました。

4.統合医療の先進国「キューバ」

共産主義国であったキューバはアメリカと対立していました。冷戦時には、ソビエト連邦などの協力が得られていましたので、経済的には困らずにすみました。ところが、冷戦終結後はソビエト連邦の崩壊等もあり、共産主義圏からの支援は減らされていくことになります。

経済的に苦境に立たされたキューバは、様々な問題を小さな経済力で解決しなければならなくなりました。特に、医療については「お金がかかる」ため、なるべく早く課題すべき問題と認識されていたようです。既に、1990年代あたりには、国費を投じて世界の「お金のかからない医療体系」について調査し、必要であれば人を派遣して学ばせていました。

ですから、キューバでは、はり灸やマッサージ、アロマセラピー、ヨーガや瞑想なども、通常の医療の中に取り入れられています。また、キューバは、お金のかかる医療を国民が利用しなくて済むように、国民の健康状態を向上させようと考えました。例えば、自生薬草の利用やファーストエイドの方法などについて、子どものころから教え込むシステムを構築しています。

このように、キューバは統合医療という概念を利用し「国民自らの手で自分の健康を維持する」国を目指しているのです。

キューバ共和国大使館 webページより抜粋 http://www.cubadiplomatica.cu/japon/EN/LearnaboutCuba/GeneralInformation.aspx

4.CAMや統合医療という言葉がなくなる日

高度先進医療は、不治の病を治る病に変えていきました。まさに、医科学が人間にもたらした恩恵です。しかし、治療を受けた身体が「日常生活」を取り戻すまでの間は、高度先進医療は何のチカラにもなりません。まさに、回復していく身体を待つしかないのです。

日本においても、相補・代替医療はこういった回復していく身体に利用されるようになってきています。それだけでなく、予防を目的、あるいはリハビリテーションを目的とした利用もされます。

しかしながら、日本では、CAMも統合医療も概念を説明し、語を知ってもらわなければなりません。しかも、CAMという表現自体が、近代西洋医学を「主」とした視点における名称です。日本の医療は、今、そのあたりにいるのです。

これに対し、キューバには、厳密にいうとCAMや統合医療という言葉は存在しません。なぜなら、CAMも近代西洋医学も自国における「医療」なのです。ですから、統合医療という語も概念も必要ないのです。
日本も、いずれキューバが目指すような医療システムを必要とする日が来ます。

今回、日本統合医療学会がキューバの学会と学術協定を結ぶことになりました。そして、その調印式が7/15に東京で行われます。そして17日に記念シンポジウムが京都大学で開かれます。キューバの医療制度を知るまたとない機会です。特に、CAMに分類されるものの中には、今後国家における知的財産として意義を有するものもあります。国際的な視点から知的財産を考える機会にもなります。是非ご参加下さい。

第1回 日玖統合医療シンポジウム

京都会場
京都大学 こころの未来研究センター本館(稲盛財団記念館)3F 大会議室

日  時
平成29(2017)年7月15日(月祝) 12:30-18:00

参加人数
先着 200名

主  催
一般社団法人 日本統合医療学会

後  援
キューバ共和国大使館、日本キューバ経済懇話会、京都大学こころの未来研究センター、関西経済連合会、他

問い合わせ
一般社団法人 日本統合医療学会

「第1回日玖統合医療シンポジウム」実行委員会 事務局
懇談会等は事前申込み必要です。詳細はこちら ↓