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「備前で学んだベナン系陶芸家」と「たまごっちで育ったケニアのデザイナー」に突撃! 【アフリカの現代アーティストインタビュー】

2018/01/15 13:01 公開
profileなかむら

アフリカ現代美術第二弾。たまごっちで遊んだケニア出身デザイナーや、なんと備前焼を学んだ、ベナン系の陶芸家まで!日本との意外なつながりも感じられるアーティストをご紹介する。
もっと身近でもっとおもしろい、同時代のアフリカ美術の世界へご案内!

アフリカ現代アーティスト インタビュー第二弾

前回の記事では、パリでのアフリカンアートブームの概要と、わたしの研究のきっかけお伝えし、出会ったアーティストを紹介した。
引き続き、ジャクリーンさんのおすすめ、パリで「今アツい」アーティストたちの物語を紹介したい。
タイトルにもあるように、日本とのつながりも深いお二人である。

インタビュー2人目:Evans Mbugua

evans_mbugua

* 😜 * Evans Mbugua - True Lips, 2017 - 100x100cm Mix Média *private collection -

www.instagram.com

ケニアのナイロビ出身のEvansさん。美術学校をデザインの専攻で卒業したアーティストだ。

I’m tired of talking about it…

アフリカのアートは最近はやっているけど、そのカテゴリについてどう思うか、という質問をすると「もうその話をするのは疲れていて…笑」と笑って答えながら、「僕も何が起こってるのかよくわからないけど、とにかくここ最近パリでアフリカ現代アートは流行ってますね」と状況を振り返ってくれた。

「分類するのは未来の人が仕事だと思う。未来から今の状況を見て、整理する。ルーブルでも各スペースに名前がついて分類されてるよね、あれみたいに。
僕自身は自身は境界を持っていない。」

特にナイロビは国際的な都市で、いろんな国の人間や文化が混ざった環境で育ったので、
「アフリカンアーティスト」という限定的な括りで呼ばれることにはなじまないそう。


「こどものころこれで遊んだよ!」と見せてくれたのは、なんと「たまごっち」

弟が、家の片付けの途中で久しぶりに見つけ、懐かしいね、と写真を撮って送ってくれたそう。
世界的に売れたたまごっちはナイロビでも皆大好きだったという。

彼がアトリエを構えるシャトールージュはパリの中のアフリカと言われるアフリカ系移民街にあるが、その街の文化についても

「自分は英語圏のアフリカから来たんだけど、この街はフランス語圏のアフリカの文化でしょ?
だからこの辺りを歩いていても、全く旅行者と一緒の感想を抱くんですよね。
この野菜見たことないけどどうやって食べるの??みたいな笑」


デザイナーとして出発、独自の作品を制作するまで

彼の作品は、背景としてPictogram(日本語でいうところの「マーク」)を組み合わせたパターンをプリントし、その上に置いたガラスに人物の肖像を点描するというスタイルで作られている。

(鳥のようにもみえる、ナイロビのヘアサロンで見つけたマークを用いた繰り返しパターン)

ピクトグラムの繰り返し技法は、デザイン専攻の卒業制作で、教官から「いわゆるフランスっぽいアートから離れた方がいい」というアドバイスをもらい、家にあったお母さまから送られた布を見て思いついたもの。
ケニアでは、布・織物をコミュニケーションの手段として使い、冠婚葬祭の時に送ったり、代々伝えたり、そしてその柄にもそれぞれ大きな意味があるそうだ。

その布はケニアの文化の一部だけど、織物や染色、プリントって普遍的なコミュニケーションの方法だな!と気づき、この表現を始めたとか。

(言うまでもなく、日本の織物や染物の柄や素材にも同じようなことが当てはまりますね!)

「でも、このピクトグラムのデザインで有名になって、そればかり依頼されるようになって疲れてしまったんです。それで、このデザインの他にやりたいことを探そうと思って。ステンドグラスを見て今の作品を思いつきました。」


人の美しい面を見せるような仕事がしたい、という思いをかねてから持っていたという彼は、ステンドグラスに描かれる聖人のように、現代に生きる生き方が美しい人々を描こう、というテーマで今も作品を作っている。


描かれる人物が眼鏡をかけているのは、目や顔の表情によって全体の印象が判断されるのを避けるため。
あえて「目」を隠した人の姿を描くことで、全体の姿から醸し出されるその人の生き方の雰囲気を表現したいという。

ピクトグラム探しは続く!

世界中のピクトグラムをよく観察しては、プリントの題材として使っていて、
まだまだこの技法を探求している途中であるそうだ

このピクトグラムは…??

ピクトグラムは普遍的で、言葉を越えるけど、地域や都市によって表し方が違うのもおもしろい。例えば信号の止まれ、を意味するマークでも、ナイロビでは帽子をかぶったりしている。
(上の写真の黒の部分はそれ!分かります?ハットかぶってるの!!)


普遍的な表現と、文化の違いを自由に行き来するEvansの探求はこれからも続く。

インタビュー3人目:King Houndekpinkou

king.houndekpinkou

4 new works + visuals of the last two shows now online on the website's gallery.

www.instagram.com

今回の記事の中で、最も「アフリカンアート」の既成概念を超えた存在といえるのではないだろうか。

ベニン系フランス人のKingさんは、イギリスで大学を出てロンドン一般就職をした。そののち、soul searching (いわば自分探し?)の中で、陶芸家になり、陶芸の技術を取り入れた現代アートを、世界中で発表しているのだ。

「働いてるとき、もともと日本人の友人がいたりして、陶芸の話は聞いたことがあった。でも会社員のときは全く気にしてなかったんだ。でも、ある時、急に陶芸のすばらしさに目覚めた。ほんとに魔法みたいだ!って。

それで、パリで夜間学校を探して、通った。もう一度新しく生まれたような気持ちでしたね。」
パリでも日本の焼き物は有名で、陶芸の技術を教える先生や、陶芸作品を制作できるスタジオもあるそう。
そんなわけで、日本人が開く陶芸教室にパリで通い、さらに芸術陶芸技術学院(ATC)の夜間部でグレゴワール・スカラブル氏に師事。 さまざまな場所で修業を積んだ中でも、特に日本で釉薬を使わない伝統的な備前焼を研究したという経歴が特徴的!

備前では、国際的にも活躍する陶芸家の澁田寿昭さんに多くを与えてもらったという。

出典:www.kinghoundekpinkou.com

備前焼2015より

”Tsuchi” is universal.

あえて「tsuchi」と発音しながら、土は普遍的な存在で、焼き物も、世界中にある文化だということがなんて素敵なことかを繰り返し語ってくれた。
普遍的であり、同時にその土地らしさが息づいていること。焼き物は本当に素晴らしい。

陶芸との出会いは、自分自身のルーツを詳しく知るきっかけにもなったというKingさん。
ベニンと備前を結ぶ B-B Project というプロジェクトで、ベニンの焼き物にも詳しくなり、さまざまな発見があったという。

ベニンのセという村の土を、ベニンにこのために建てた楽の窯で焼く。その作品はベニンの都市で展示された。また備前の土と、セの土を交換したり混ぜたりすることも行ったそう。
「実は、このセという村のすぐ近くに、父の生まれた村があったんです。父は幼い頃に亡くなったんです。プロジェクトをやったあと、2016年に気づいたので、本当に全くの偶然。
焼き物の父である渋田さんと、生物上の父が焼き物を通じて出会った。これは運命なんだと思いましたね。」


私もこの取材をするまで知らなかったことなのだが、いわゆる「アーティストレジデンス」(芸術家を招聘し、滞在してもらう形のアートプロジェクト)を、日本の伝統工芸の地でも行っているらしい。備前とベニンのプロジェクトもレジデンスを双方で行う形で実現した。
そして、なんと来年はアーティストレジデンスで、滋賀の信楽に数か月滞在するらしい!

「次は信楽の土と、母の出身地の土を混ぜようと考えています」


あくまで陶芸家として、陶芸的に

彼はもちろん自分自身をアフリカンアーティストのカテゴリーで考えていない。
じゃあただアーティストだ。と思っている?と聞くと、
「僕は自分をCeramistだと考えている。Ceramic(陶芸的)にものごとを考えている、と言えるね」

これは大変興味深い発言だった。何々家であるというカテゴリーが通用しなくなりつつある現代アートシーンにあっても、
Kingは、土の普遍性を信じるがゆえに、あくまで「陶芸家」であることでさまざまなカテゴリーを越えて他者と繋がることができる。
これは、アフリカ系アートの広がりだけでなく、日本の伝統工芸の、生き生きとした姿の再発見となったことは、言うまでもない。

「日本は青森から九州までいろんなところを旅したけど、どこに行っても食べ物はかつ丼が一番すきかな」
来年はぜひ関西でかつ丼を食べようと約束した。

アフリカを知るなら、アートから!

以上、パリで出会うホットなアフリカ系アートシーンをお届けした。


インターナショナルでかっこいい面も、日本との意外なつながりも感じていただけたらうれしい。
「アフリカの現代美術」という言葉から最初に感じたイメージよりは、身近で、そして色んな形で楽しみやすいものだということがきっとわかってもらえたのでは?

意外と、自然よりも伝統文化よりも、アフリカの今をカジュアルに感じて楽しむなら、アートなんじゃない??と私は思っている。
少しでも気になった方は、ぜひSNSやウェブサイトから覗いてみてほしい。

キンシャサ編につづく!



次回以降、私が専門とするコンゴのアーティストや、アートシーンを紹介していきたい。
魅惑の都市、キンシャサへ!


Eddy Eketeとキンシャサの仲間たち