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「京大総人の化身」新井翔太さんが語る、守備範囲無限大な大学生活【哲学専攻?B’z同好会?小説家!?】

2017/07/16 19:21 公開
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「外資系投資銀行入社でR-1出場者?」
「本出版してて、B’z同好会?」
「哲学者で小説も書いてる?」
守備範囲無限大。とにかくなんでもやっちゃった学生生活を語ります。

「外資系投資銀行入社でR-1出場者?」
「本出版してて、B’z同好会?」
「哲学者で小説も書いてる?」
そんな複数の経歴、異名(?)を持つ、ある男を待っていた。

にっこりと微笑みながら現れたのは、
京大総合人間学部卒で、京大大学院人間・環境学研究科。哲学を専攻している新井翔太さん。(現在はすでにドイツ銀行の投資銀行部門に就職されている)

優しさに溢れたオーラとメガネの奥にあるつぶらな瞳。このステキな笑顔の裏に隠された情熱と哲学とは。そんな新井さんの素顔に迫ります!

小5で叩き込まれた「知は永遠の資産」

— まずは、新井さんの生い立ちから聞かせてくれますか?どんな子どもだったんですか?

「小3から野球をやってて、お母さんに怒られるまでずっと壁当てしてたような野球大好き少年でした。
ありきたりなんですけど、その頃の夢はプロ野球選手になることでしたね。」


— いいですねぇ、微笑ましいです。

「小学生の中では野球はそれなりに上手くて、のめり込みました。
ただ小5の中学受験の時に、野球か受験かっていう選択を迫られたんです。


ー それは大きい選択ですね。

「親がね、頑張ってる野球少年に残酷な現実を突きつけるんですよ。」


— 残酷な現実……??

「あるとき、親に言われたんです。」
『プロ野球ってのはね、市内・県内で必死にチームで勝ちあがって、甲子園に出場してそこでも勝ち上がって、その中でも選ばれた人がプロに入るの。
しかも、そんなすごい人たちがうじゃうじゃいる中で2軍からスタートして1軍に這い上がった限られた人たちなの。』


— 小5の野球少年に、親がそんな現実的なこと言う?(笑)

「さらに追い討ちかけるように親が言うんですよ」
『知り合いの女の人の夫がドラフト1位で指名されてプロに入ったけど、肩を怪我して今では、工場の清掃員。女の人にとっては、野球選手とのウキウキ結婚生活から一転、貧乏生活。


— いや。だから、親が小5にそんなこと言う??

「でも同時に、ひぃおばあちゃんの話もしてくれました。

『ひいおばあちゃんは当時の女性では珍しく、大学まで進学し教育を受けた人だったけど、
そこで得た知恵があったからこそ、戦時中に生きのびることができたの。
土地とか宝石とか、持ってた財産は取り上げられたけど、頭に残った「知」は取り上げられなかった。


—「知」は取り上げられない……

「だからうちの親の教育方針はこうでした」
『知は蓄積されていつまでも消えることはない。親が与えられるのは教育だけ。』


— オォ。なんて深い話…。

『確かになぁ。現実的に自分がイチローになれるとは思えんし、勉強して世界を広げる方が自分にとって良い人生かもしれん』
「って自分でも納得して、中高一貫の私立受験を決めました。」


—それで納得する小5もすごいですけどね。


中高一貫での挫折「何者でもない自分」

— 結局、中高一貫に入ったわけですね。


「第一志望だった甲陽(兵庫の名門私立男子校)にギリギリ受かりました。周りには自分より頭いい人ばかりで…。毎回毎回、追試や補習を受けまくる日々。あぁ、自分は勉強できないなぁって。完全な落ちこぼれでした。」

— 野球は続けていったんですか?


「一応、野球部には入りました。でも周りも勉強だけじゃなくて、運動すらこなしちゃうんですよね。運動なら勝てるやろ!って思ってたけど、そこでもそんなに勝てなくて。プライド、ズタズタでした。

— ん〜なんかめっちゃ意外です。昔からできる人なのかと勝手に思ってました。


「人と比較して落ち込むことは多かったです。みんな、なにか持ってるのに自分にはなにもない。自分は何者でもない。って感じてた中学生活でした。」

ミス甲陽高校??

—じゃあかなり辛い中高生活だったわけですね…

「でもだんだんと巻き返してきました。徐々に体力もついてきて、運動もそこそこできるキャラになって。
でも僕にとって一番の転換点は高2の文化祭でした。甲陽の伝統あるミスコンで優勝したことが大きかったですね。」


— ん?ミスコン??
「めっちゃ頑張って女装して2008年の『ミス甲陽』になりました。代々続く、女装コンテストです!」


—そんなやりきった顔で言われても…

ビジュアルからマインドまで、何から何まで女になりきりました。アソコ以外全て綺麗に剃った(笑)」


—なるほど、遊びじゃないガチの女装なんですね…

その頃の女装姿の写真を引っ張り出してきてもらいました。これは美女…

— 確かにかわいめの顔してますもんね。ちなみにどんなところが評価されるんですか?

「もちろん見た目の美しさもですけど、中身も審査対象でした。もともと野球部でしてた筋トレはシェイプアップ系の筋トレに変えましたし、ダンベルを持ちながらハイヒール履いて食事も気を付けてメイクも練習して、ウォーキング練習もひたすらしてました。


— めちゃめちゃ、努力家ですね。

「女子力を競うためにりんごの皮むきの競技があるんですけど、箱でりんご買って皮むきの練習、家で死ぬほどしましたね。
りんごのシャキシャキした音が苦手で、苦痛に顔を歪めながらひたすら皮をむいてました」


— 何でそんなストイックになれるんだ…

「これがきっかけで、自分よりすごい人への遠慮を振り切れたんです。初めて自分の殻を破れた気がして。
出場してホントに良かったです。これ以降、もっと学校の中心にも関わっていこうって思うようにもなりました。」


京大、総人へ。

— どうして京大へ行くことに決めたんですか?

「京大のオープンキャンパスに行った時に、なぜか京大生になっている自分ををイメージできたんです。これは直感ですね。」

「もともと政治と思想、哲学に興味があったのと、理念が自分にあってるなと思って、学部は総合人間学部、総人に決めました」


— 総人の理念、ってなんでしたっけ。

「文理融合。学際的な研究。既存の研究を超えていって、新しいものを紡ぎ出す。」


— オォ、めっちゃかっこいい! てかそもそも学部ごとに理念とやらがあったのか..(初耳)

中高でわかったのは、自分はスペシャリストに向いてないなってことだったんです」

—いや十分女装のスペシャリストな気がするんですけど…

テレビ局からも2社取材された、京大卒業式でのガチ女装。

「甲陽の時もそうだったんですけど、数学オリンピック出てるやつ、英語ペラペラなやつ、アニメ超詳しいやつ、ゲームめっちゃ得意なやつ…….

やっぱり周りは何かに尖った人が多かったんですよね。けど、僕はそういうタイプではないなって。
幅広いことをそこそこできるタイプだなって思ってます。」


—周りがヤバすぎて、相当なレベルでも「そこそこ」になってしまうわけですね。トップレベルの中高一貫の魔力…

「だからこそ、総合的に戦っていくしか、生きる道はない!と思ったんです。それが総人にマッチしましたね。」


全部、自分で決めてる感じがします。考えて決めて、ストイックに頑張る。ここまで、自分が決めてきた理由をはっきり言える人ってなかなかいない。「なんとなくふわっと決めちゃって覚えてない」なんて人の方が多いと思うんですよね。

尽きぬ、総人愛

「総人はその理念の通り、自分で主体的に何かつかみ取ろうと思ったら、どんなことでも返ってくる、素晴らしい場所でした。先生が多くて、学生一人に対して先生一人以上いるんです。」


—その比率、意味わかんないですね。

「全然専門外のことでも、すぐ先生に話を聞きに行けたり、気軽に議論できる近さがあるんです。
哲学的なことを問い考えるのが好きなので、特に自分の研究室の教授の多賀先生にはよく議論に付き合ってもらいました。」


ー教授と議論なんて、なかなかできないですもんね普通。

「突拍子もない哲学的なアイデアにもしっかり意見をくれて。
『B'zの歌詞をフランス現代思想と連関させて、B'z哲学を構築する』とか。」


ー思ったより本当に突拍子もないこと話してますね笑


「他にも、『ドゥルーズ的な時間概念を金融理論で捉え直し、人生のアイオーン価値をバリュエーションする……」


—すみませんガチすぎて無理です。と、とにかく総人への愛が伝わってきます!

「大好きですね。大学の総合人間学部の代表としてオープンキャンパスイベントを企画したり、学生の公式イベント『総人合宿』の代表やったり。」


—学部にここまで愛を感じられる大学生って、いない気がします。

『おもしろそうじん』っていうキャッチフレーズ作ったのも僕なんですよ」

総人解体の危機に、立ち上がる

「そんな大好きな総人が「解体されるかもしれない」っていう危機があって。なんとか阻止したいといろんな企画をしました。」


—そんな時期があったんですね…

「それで挑戦したのが、先輩との本の共同出版ですね。
そもそも議論する土台が大事なんじゃないかって。それで本出しちゃいました」

http://www.nakanishiya.co.jp/book/b135053.html

— だいぶちゃんとしてる本ですね…
ノーベル賞受賞者、益川教授のインタビューも載っているそうです! 学部がなくなるっていう、自分じゃどうしようもなさそうなことに対して、本気で立ち向かっていったんですね。

恐怖の守備範囲。そんなことまでやってんの??

「幅広く総合的に戦いたい、っていう思いは、学問以外でも強かったです。
大学では具体的に目標を決めてしまうよりも、むしろゴールを決めるために、まずは自分の視野を広げようって感じでした。
本当に色々やってきましたね。1回生の時はギャングスター入ってましたし」


—アメフトもしてたんですか!

「それしかできなくなりそうだったんでやめちゃったんですけどね。
3回生の時は、公認会計士の勉強を1年間1日10時間勉強してましたね。」


— 突然の猛勉強!? 何が突き動かしたんですか!

「その頃付き合ってた彼女が、家族とうまくいってなくて、なんとかして助けたくて、でも自分には経済力も何もない。駆け落ちも何もできない。それで現実的な生きる力をつけたいと思って…」


—それで会計士を猛勉強ですか! いろんな意味でアツい!

「結局勉強してみて、『お金をもらっておいて顧客に厳しく監査しなければいけない』っていう構造がジレンマになりそうで嫌だったからやめちゃったんですけどね」


—・・・なるほど?

「あとサークル活動では、B’z同好会の絶対(的)会長でした! NFのステージで歌うのがメインなんですけど、
京大で一番ウルトラソウルな団体で、NFで一番ウルトラソウルな企画って僕は自負してます。これはゆるぎないものひとつですね~。」


—・・・楽しそう

「あとは西日本一周とか。チャリで。
日本って資源がない国って言われがちなんですけど、回ってみたら、案外有り余ってるんじゃん。認識されてないだけなんじゃないかなって思ったり」


野宿もしながらチャリ漕ぎまくったそうです

—有り余ってるのは新井さんの行動力の方ですよね。

「そういえば、相撲の全国大会にも出ました。京大相撲部の助っ人で、大相撲で有名な両国国技館の土を踏んだっていう。(笑)」

—・・・?

ピン芸人としてR-1も出てみましたね」

—・・・

「あと最近は小説書いてます。
ここ1年半で 『美しい不均衡と構造的な部屋』 『アイオーン』 『キゲン~死に似た悲しい安らぎ~』の3作を書きました。新人賞とか出してみてるんですけど、時代が追いついてないみたいです笑」


—・・・

—もうまとめ方がわかんないよ(涙目)



守備範囲がやばすぎて、到底まとめきれませんでした。
「自分はスペシャリストになれないから、総合的に戦うんだ」というある意味「軸を持たないという軸」を貫き通してきたからこその、極彩色の大学生活。

新井さんはまだ話し足りなそうにこちらを見ていますが、院生の時にアメリカ留学してなぜかガチで野球をやりマリナーズのセーフコ球場で試合した話や、今まさに外銀で働いてる話は、またの機会に…。

皆さんも、これくらい自由になってイイんじゃないですか?