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お化け屋敷研究の入口〜怖いのに楽しいって何?〜

2017/03/20 18:02 公開
高取諒輔

お化け屋敷の研究って?お化け屋敷を学問と捉え、その怖さと楽しさの謎を追究します!

自覚アリ、お化け屋敷の変態

 京都大学総合人間学部で「お化け屋敷」の研究をしていました高取諒輔です。

 手始めに、簡単な「お化け屋敷、変態度チェック」をしましょう。
 

 以下の8つの項目のうち、全て当てはまれば、晴れてあなたもお化け屋敷の変態です。

① 全国のお化け屋敷100近くにアンケートを送り、調査したことがある

② 様々なホラープランナー(職業:お化け屋敷制作専門のプロ)に取材したことがある
③ これまで40以上のお化け屋敷に入ったことがある

④ お化け屋敷でアルバイトをしたことがある

⑤ 移動式お化け屋敷の方々と共に生活をしたことがある

⑥ 企業や自治体などと連携しながら4つ以上のお化け屋敷制作に関わったことがある

⑦ 「日本お化け屋敷サミット」にゲストとして参加したことがある

⑧ 今年の年越しも、もちろん「お化け」でした



 はい、私がお化け屋敷の変態です。

実は存在する日本お化け屋敷サミットの様子

 
 ここからは、この変態と一緒に、お化け屋敷に関する様々な謎に触れ、「私はこれを考えたい」、そんな自分なりの「お化け屋敷研究の入口」を探してみましょう。

第1の謎〜怖いのに楽しいって何??〜

「お化け屋敷」って怖いから楽しいですよね。  
 ん??ちょっと待ってください。

 怖いのですか?楽しいのですか?  


 恐怖とは、もともと私たちにとっては不快な感情であり、そこで感じられる危険性を回避するように私たちに働きかけるものです。つまり恐怖は「嫌なモノ」と言っても過言ではないでしょう。

 このように恐怖は本来避けるべきものであるにもかかわらず、
 私たちはなぜ「お化け屋敷」に入るのでしょうか。
 しかも、わざわざ数百円払うのですから不思議なものです。

 恐怖を避けるのであれば、「お化け屋敷」に入らなければよいのです。
 そもそも「お化け屋敷」は存在する必要がないのです。  


 しかし、実際に「お化け屋敷」は存在しています。そして「お化け屋敷」を出たお客さんたちは(ほとんど何かしらの文句を言いながらも)笑顔でいることが多いのです。つまり、恐怖=娯楽ということになりますが、これは一見矛盾しているようにも思えます。
 
 このことを説明できない以上、私たちはなぜ「お化け屋敷」が娯楽施設として成立しているのかを理解していないのです。  

 少し余計なことを言うならば、恐怖、不安、驚きはどのように異なり、私たちは「お化け屋敷」で何を体験しているのでしょうか。
「この人形怖い…」=恐怖
「このドア開けたら、絶対何か出るって…」=不安
「うわっっ、なんだ鏡に映った自分か…びっくりした…」=驚き
これらは、私たちの「楽しさ」にどのように影響するのでしょうか。  

 さらに余計なことを言うならば、ここで言う「恐怖」はジェットコースターのそれと何が違うのでしょうか。仮に同じであるという立場を採用したならば、ジェットコースターはダメだけど、お化け屋敷は大丈夫、という人は何をもって区別している(区別されている)のでしょうか。  

 私たちはよく「1番怖いお化け屋敷はどこか」という問いを立て、その解を探しますが、「1番怖いお化け屋敷」=「1番楽しいお化け屋敷」とは限らない、ということだけここでは述べておきます。

花見期間、八坂神社に登場する仮設型お化け屋敷。「お笑いお化け屋敷」「お化けが出るから楽しいんですよ」などの口上が特徴的。

第2の謎〜あなたにとっての「お化け屋敷」とは?〜

 「お化け屋敷」と聞いて、どのようなお化け屋敷を思い浮かべますか?

(1)1年中遊園地にあるお化け屋敷(富士急、ひらかたパークなど)
(2)テーマパークにあるお化け屋敷(ユニバなど)
(3)期間限定で夏だけ現れるお化け屋敷(雑誌の夏のお化け屋敷特集に載る系)
(4)神社のお祭りなどで見る昔ながらのお化け屋敷(露店と並んでる)
(5)文化祭のお化け屋敷

(A) 乗り物に乗るお化け屋敷
(B) 入口から出口まで歩くお化け屋敷
(C) ヘッドホンで聞くお化け屋敷
(D) VR(バーチャルリアリティ)を使ったお化け屋敷  

 今あげただけでも様々なお化け屋敷があることが分かるでしょう。
あなたが「お化け屋敷」と友達に言ったとき、それは友達の「お化け屋敷」と同じなのでしょうか。  

 このように「お化け屋敷」は一口には語れません。

 例えば、お化け屋敷のPV(プロモーションビデオ)はどのように工夫され、どのような効果があるのかについて考えるとき、文化祭のお化け屋敷や神社の昔ながらのお化け屋敷はそもそもPVを作っていないことが多いのです。また、浅草花やしきなどでは狙う客層がファミリー層であり、元気な大学生などをターゲットとするお化け屋敷とは戦っている土俵が違うのです。  
 
 したがって、私たちが「お化け屋敷」を語る時、様々に分類し、それぞれの特徴に応じて丁寧に検討する必要があるのです。

 (ちなみに私は(4)(B)で年越しました。)

京都三条会商店街に期間限定で登場するお化け屋敷。下はPV撮影の様子とプロジェクションマッピングによる演出。(京都お化け屋敷大作戦)

第3の謎〜そもそも「お化け屋敷」って何??〜

 もっとも、分類する前にそもそも「お化け屋敷」とは何であるかについて考える必要があります。
 
 まず「お化け」とはどのようなものでしょうか。
 妖怪や幽霊、ゾンビなどと何が違うのでしょうか。あるいは、すべて「お化け」として定義してもよいのでしょうか。

 ピカチュウが(ポケットサイズであるものの)モンスターすなわち妖怪であると解すれば、ピカチュウは「お化け」となるのでしょうか
 そうでないとすれば、ピカチュウは河童や目玉おやじと何が違うのでしょうか。
「ピカチュウはかわいいから妖怪でない」という立場を仮に採用するならば、妖怪という概念は主観的に判断されるものなのでしょうか。  

 また、「お化け役のあなた」と「お化け役でないあなた」はどの時点から「お化け」となり、どの時点から「人としてのあなた」になるのでしょうか。それとも両概念は併存することができるのでしょうか。
 そして「お化け」と「『お化け屋敷』のお化け」は同じ定義になるのでしょうか。  

 なるほど、仮に「お化け」が何か分かったとしましょう。しかし今度は、肝試しや心霊スポット巡りとなにが違うのか、あるいは、「屋敷」は何を意味しているのかについてさらに検討する必要があるのです。
 スケルトンで仕掛けが丸見えのお化け屋敷を果たして認めるべきか、3人で中に入ったのに2人しか出てこないガチで危険なお化け屋敷は果たしてお化け屋敷なのか、そのような論点として現れるでしょう。  

 このように私たちはそもそも「お化け屋敷」が何であるのかさえ分かっていないのです。  

 余計なことを加えるならば、「お化けのいないお化け屋敷」は存在可能か、という問いが考えられます。これは実は「お化け屋敷」の本質を問うているのではないか、と私は考えています。興味のある方は、この点、少し深掘りしてみると面白いでしょう。

お化け屋敷の外まで追いかけてきた口裂け女と油断して捕まった筆者。(岐阜・柳ヶ瀬商店街)

第4の謎〜どの学問分野なの??〜

 私たちは「お化け屋敷」に関する様々な謎があるのはわかりました。
 では、「お化け屋敷研究」とは何なのでしょうか?

お化け屋敷への考えが溢れ出て、もはやスタートの「お化け屋敷」がどこか探せない図

 
 第1の謎は、脳のメカニズムによる説明を加えるならば脳科学、「お化け」との関係や怖いと感じるのがどのような時かに着目すれば心理学、さらには身体論によって一定の説明はつくでしょう。  

 第2の謎は、お化け屋敷がいつから登場し、どのような変化を経てきたのかを考えれば歴史文化の領域。客層が何で、どのようなビジネス形態であるかを考えれば経済学経営学の領域。どのような立地や場所であれば集客が望めるかなどは地理学の領域。このような理解によって、妥当な分類は可能になるでしょう。  

 第3の謎は、幽霊、妖怪の概念は民俗学の領域。「私」に現れる「お化け」とは何かを考えれば哲学領域。  

 さらには、お化け屋敷による地域活性化などは公共政策学観光学の領域。世界のお化け屋敷との比較は各比較学宗教学などと関係しますし、新しい技術や他分野との融合、ホラー産業としての位置づけやPVなどの広告の効果なども考えると、お化け屋敷は溢れるほどの学問の宝庫なのです。  

 このように、「お化け屋敷」の研究は、一つの学問で語ることができないものです。
 様々な学問分野の壁を越え、ありとあらゆる学問的知識を総動員しなくてはならないのです。

最後に〜他分野の必然性とその面白さ〜

 確かに「お化け屋敷」は特に幅の広いテーマであると思います。
 
 しかし、お化け屋敷に限らず、何らかのテーマを本気で取り組む時、あるいはそれを語り尽くそうとする時、本当は一つの学問分野だけでは解決できないのではないでしょうか。

 私たちはある学部、ある研究室(ゼミ)に所属し、ある先生の下で学ぶことでしょう。それは必然的に自分の専門を確定させる通過儀礼なのでしょうが、しかし、専門分野は最大の武器であることを前提とした上で、専門分野だけにとらわれずに、もう少し隣接分野や他分野を学び物事の本質に迫ろうとすることはできるのではないでしょうか。  

 京大は、少し違った切り口から当該対象に切り込み、面白い研究や成果を上げる環境に恵まれた稀有な大学、そして京大生はそのポテンシャルのある稀有な学生であると感じています。  

 誰かにそっちが入口と言われても、入口が1つだと誰が決めた?  
 迷いなく自分の入口に進む。それが京大生。だから面白い。

お願い

 私は現在京都大学ロースクール生(新2年生)で、もはやお化け屋敷の研究をしていません(できません!)。  

 そこで、お化け屋敷に興味を持って、ぜひ研究したいという方がいたら、
cat.melon.law@gmail.com まで連絡ください!!(お化け屋敷専門の研究者はいません、今がチャンスです!!)

番外編

お化け屋敷あるあるをどうしても言いたいので、勝手に書きます。

① お客さんが「お化けさん、ごめんなさい!本当にごめんなさいいいいいいい!!」と叫ぶ  

→彼、彼女たちは一体何に対して謝っているというのか……


② ちょっとタイミング悪く出てしまった「お化け」は、凄く恥ずかしがっている

→「お化け」さんも分かっているんです。「タイミングわるっ」とか言わないでください…ほんまに辛い…


③ カップルが中でケンカを始めて、「えっ、どうしよ」ってなる

→「だから嫌って言ったのに!」とか怒る女の人、ごめんなさい、うちの「お化け」がやりすぎました……でもとりあえず後ろが詰まっているので、立ち止まらないでください(切実)。。


この手の話は、書き始めると止まらなくなるので、この辺で失礼します笑